時をかける表象

東京大学文科2類。記事と日記に分かれてます。

累進課罪

2019/06/09 日曜日

 

小学校の時、どうも好きになれない男がいた

家が貧しくて家庭環境が悪いのは仕方ないとしても、それを口癖のように自虐し、「俺もお前みたいな人になりたかったわ」「ええな、お前は」と目を細めて言ってくる

何をしても鈍臭く、影で悪口は言うくせに、大勢の前ではオドオドして自分の意見は言えない

腹を立てると、特に女子や気弱な男子に対してすぐ暴力を振るう

誰にも構ってもらえないから休み時間に大声で独り言を言ったりして騒いだりするくせに、授業中の音読の声は小さい

そしてなにより、他人の成功を妬み、蹴落とすために教師にチクる

みんな、純粋に関わったらダメな気がするから遠ざけているのに、自分はいじめられていると主張して保護者が学校に怒鳴り込んでくる

今思えば、それは恵まれない環境で育ってしまったことが原因であって、もしかしたら本人には落ち度がなかったのかもしれないが、少なくとも小学校高学年だった当時の自分には、ただうっすらとした嫌悪感を覚えることしかできなかった

特に、何故か自分はその子のお気に入りだったようで、自分が掃除をサボったり置き勉したりすると、すぐに教師にチクって喜んでいた

友達数人で自分の家でゲームをしようと話していると、「それ、俺も行くわ」なんて言って、誰よりも早く家のピンポンを押してくる

ウザいから家に来ないでくれるか、と言えば、また教師にチクって、教師の説教と尋問の中で失言をしてしまい、意味もなく自分が怒られる

自分はどうしても彼のことが嫌いだった

とりあえずの対処法として、遊ぶ日時と場所を彼に悟られないようにする、中学の時は、彼が入っているクラスのLINEグループと、入ってないLINEのグループを作っていることを悟られないようにする、出来るだけ1対1の接触を避けて集団戦で対応することなどを実践すると、彼は自分がコミットできたと思って喜んでいたようだったが、それでも女子に対するセクハラ行為や教師への告げ口は収まらなかった

中学を卒業して、みんながそれぞれの高校に進学した後も彼はちょっかいをかけてきた

特に何故か自分はTwitterで彼から執拗なアンチコメを受け、根も葉もない噂を流されたりもした

そんな、本当にどうしようもない人間を見る度に、そしてそんな人間に足を引っ張られる度に、まぁどうせこいつは将来どっかで野垂れ死ぬんだろうから、と思うことで自分の尊厳を保ってきた

自分の話題がSNSに上がる度に、「俺、こいつと小中一緒だったけど、」といつまでもしゃしゃり出てきて過去の発言や行いをわざわざPRしてくれる

そんな彼は今、どこで何をしているだろう

もし、誰かが働いて納めた税金で飯を食っていたとしたらどうしよう

累進課税制度の下で、これから自分が頑張って就職してお金を稼げば稼ぐほど、自分は高額納税者になり、間接的に彼を養うことになるかもしれない

ただの放火事件に「東大生の女が」と付け加えた記事が話題になって、実名と顔と出身校とが晒されて、東大生をバカにしたいだけの人間が匿名で批判している

何も知らない大勢の人間が「上級国民だから逮捕されてない!」なんてことを叫ぶ出来事もあった

もちろん国立大学は税金で成り立っているし、中でも東大はその割合が高い

社会全体で苦しんでいる人を助ける必要があるのもわかる

しかし、どうも世の中には、匿名で東大生に苦言を呈したい人間が多いらしく、またメディアもそういう人間にエサを与えるかのように「大学生」とは書かずに「東大生」と表記する

まるで高学歴になればなるほど罪が重くなっているかのように

自分は全くリスクを失うことなく、ただネットで苦言を呈したいだけの人間は、きっと自分が嫌いだった彼のように、自分では何もできなくて、でも誰かの成功が妬ましくて何かを言いたがってる人なのだろう

そんな人が多い国では働きたくないと思う人が増えるのは、そんなに理解できないことではないが、すると彼らは「優秀な人材は日本から出て行こうとしている!」「売国奴だ!」なんて叫び出すだろう

そうか、1人で友達を作ったり楽しみを見出したりできない彼は、「自分はいじめられている!」と叫ぶことで、相手をしてくれる人が遠ざかっていくのを防ごうとしていたんだな、とやっと気付いた

同じように、普段は東大生をバカにしているものの、基本的にはその恩恵を受けたいと思っていることも

1人では何もできない人間の末路がこれか、と悲しくなった