時をかける表象

東京大学文科2類。記事と日記に分かれてます。

よしの「イチゴ狩り遺跡に行った」

2019/03/17 日曜日

 

今日はまず彼女とイチゴ狩りに行った

自分がイチゴが好物なので、彼女が前から企画してくれていたらしい

自分の家から車で20分くらいの所まで行った

2人ともイチゴ狩りは初めてなのでよくわからないが、今日行ったところでは6種類のイチゴを食べ比べできるらしい

道中、菜の花が一面に咲いている箇所があったので思わず写真を撮った

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ここは30分間イチゴが食べ放題で、今日は客が多くてできなかったのだが、通常なら計り売りで持ち帰りもできるらしい

家を出る前に母が、絶対あった方が役立つからと手渡してくれた練乳を握りしめて、鬼のような形相でイチゴを食べようと思った

 

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ハウス内にはハチが放し飼いされているので、近づいてきても慌ててはいけない

しかも今日は食べ放題なので、まるでクマがサケを食べるようにイチゴの美味しい部分だけを贅沢に食べることができる

クマは別のクマとの接触を避けて川岸や森にサケを運び、サケの最も栄養価の高い部分だけを食べて、残りを川岸や森に捨てることで、そこに住む動植物に栄養を与えているという話をどこかで聞いたことがある

それと同じように、イチゴのヘタを取らずに先端部分だけ一口食べて袋に捨てるというリッチな食べ方をした

もっとも、クマと違ってこの行為は生態系においてなんの役割も担っていないのだが

 

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章姫、やよい姫、かんな姫、よつぼし、おいCベリー、かおり野の6種類のイチゴを食べられるのだが、個人的には章姫とかんな姫が好きだった

どちらも甘くてやわらかいのが特徴らしい

天国のような30分はあっという間に過ぎてしまった

祖父母が馬鹿の一つ覚えのように孫に好物を食べさせることで、孫がそれを嫌いになるのと同様に、もしかしたらイチゴを食べ過ぎて、今日でイチゴを嫌いになってしまうのではないか、という心配は杞憂に終わってしまった

序盤の10分くらいを撮影タイムに費やしてしまったのと、練乳を持ってきたことは良かったが、その都度イチゴにかけて食べることで時間をロスしたことが原因だと思われる

次回は練乳をあらかじめ出しておくシャーレのようなものを持参しようと思う

 

 

 

例の後輩

2019/03/16 土曜日

 

今日はスーツなどを買った後、高校の部活の後輩とご飯を食べに行った

この後輩は箱根駅伝出場を目指して箱根駅伝最多優勝を誇る関東の大学へ進学したものの、夢破れて山河あり、城春にして草木深し、といった感じである

元々は1歳年下だったが、彼は現役で合格しているので「これってもしかして…」「私たちの学年が…」「「入れ替わってる〜!?」」的な現象が起こっている

同じ部活で、しかも同じ中長距離という直属の先輩後輩であったが、2人ともそういったタテの付き合いを重んじないタイプだったので、当時から特に敬語で話したりもしていなかった

いや彼自身は先輩や後輩によってはそういう「やってる」態度を取っていたのかもしれないが、自分と彼との間に先輩という概念はなかった

自分が部活を引退して彼が最後の県インターに臨む時や、彼が受験生の頃に何度か相談を受けていたこともあったが、彼が大学で部活を辞めるとなった時を機に2人の関係がより近くなったような気がする

自分も浪人中だったし、高3で近畿インターハイに出場した彼も陸上という一つのアイデンティティを失った状態だったから、お互いの気持ちに寄り添える部分があったのかもしれない

もし彼が自分と家が近い幼馴染だったり、ずっと同じクラスだったりしたら、多分彼とは仲良くなれないんだろうなと思っている

それくらい価値観と生き方が違う

どちらが正しいというわけではないが

センター試験まで10日を切っていても、二次試験の数日前までも普通に長電話をし、いつも電話を切るときにはなんの脈絡もなく「じゃ、勉強頑張ってください」と言っていた

申し訳なさをかき消すためなのか、いつものように いい人 に見せたいのか、それとも本当にそうなのかわからないが、センター試験の前日にはレターパック湯島天満宮のお守りと手紙をレターパックで送ってきてくれた

今日も見ず知らずの小学生の陸上の練習に参加し、頼まれてもないのに叱咤激励したらしい

和田アキ子がいたら「ところであなたは何をされてる方…?」と聞かれていただろう

そんな彼が「今夜限定で」奢ってくれるとのことで今日はご飯を食べに行く手はずになっていた

1時間ばかりカラオケに行った後、彼の幼馴染が手伝いをしている店へ向かった

今夜限定で、というのは、どうやらその子が今日出勤していることと関係があるらしい

しかし行ってみると2時間待ちで、困った2人は彼の実家を訪ねることになった

そこで彼のお母さんと弟と話しながら時間を潰し、その店で料理をご馳走になった後、彼のお母さんに家まで送っていただいた

後輩に奢ってもらったことはありがたかったが、行く店が決まっているのに事前の予約はせず、電車の時間も調べずに改札を通って20分ほどホームで立ち尽くし、自分とは縁のない彼の幼馴染と自分とを無理やり繋げようとしていた

改めて自分の彼女の能力を再認識するとともに、多分彼はこういったことの全てを気にしていないのだろうとも思った

実際肉とか焼いてくれたし、カラオケに行っても自分の歌をヨイショしてくれた

上京しても彼と日常の数%を共有することを思うと、お互い改善しなければならない点があり、お互いのベクトルを上向きに維持し続けなければならないと思った

 

 

 

 

 

 

 

幼き頃の学び舎

2019/03/15 金曜日

 

今日は中学高校と同級生だった男とご飯を食べに行った

 

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遡れば小学5年生の時から塾が一緒で、中学3年生から高校3年生までの4年間ずっと一緒のクラスだった

確率的には140分の1くらいになるみたい

これは言っていいのかどうかわからないが、彼は現在大阪大学に通っていて、明日には大阪の方へ帰るらしい

駅周辺で適当な店を決めてご飯をご馳走してもらった

今日はお祝いだから奢らせてください、と言われ、いつかこの恩を返さなければならないなと思うと同時に、これは見習わなくてはいけないなと思った

お金の使い方と、自分がその場を払う時の態度を適切に身につけなければならないと思った

同級生ではあるが、社会的には一つ年上にあたる同い年、なんか不思議な存在

 

店を出ると2人が通っていた学習塾を訪れた

当時の校長先生と校長代理の先生が今年の春からもタッグを組んでその校舎にいるらしい

自分の学年では40人弱の教室から8人もトップ校に合格した

未だにこの記録は破られていないらしい

なぜか例年になく各中学のトップ層がこの学習塾に集まって切磋琢磨した学び舎である

というか小学校で集まった生徒たちが各々の中学でトップ層になったというのが正しいのかもしれない

当時を振り返ると、なんとなく放課後暇だから適当にここの塾に来て、黙々とガリガリ勉強するというよりはむしろ、ワイワイ騒ぎながら勉強の話をする、といった感じだった

今になって先生から聞くと、校長や校長代理以外の先生は自分たちのクラスを担当するのが嫌だったらしい

確かに、先生が次に説明しそうなことを当てるゲームが自然発生的に行われていたし、野党並みにヤジを飛ばしていたし、学区長に大挙して直談判することで、あまりきちんとしていない新任の校長先生を1年で追い出したり、授業の形態をガラッと変えたりもした

記述問題を扱う際は、

「なぁ、○○はこの問題をどう書いた?」

「てか、先生はどういう答えが正解だと思いますか?」

みたいな会話が私語として飛び交っていた

1人のガリ勉を除いて、みんなに余裕があったから余計に楽しかった

なにか革命を起こしている気分だった

結果としてこのメンバーは同じ高校を卒業したのちに東大、京大、阪大、神大に進学することになり、どこか物足りなかった学校生活と並行して、初等教育の段階でこういったメンバーに触れ合えたことは自分の人生に大きな影響を与えたように思える

こういうメンバーの中に自分がいることで、この地区のトップ校に行くことは自分にとっては当たり前のことになり、おそらく関東の超進学校はこういった形で東大に行くのが当たり前ということになっているのだろう

でも、特に自分は劣等感を覚えず、そういう集団に属することにプレッシャーも感じなかったので問題はなかったが、東大合格者数が3桁になるような学校の生徒は実際どういう心境なのだろうか

そしてそういったエリート集団にも何かの欠陥はあるもので、その短所の部分をどう乗り越えて人間としての完成度を高めて行くのだろうか

上京した時に確かめておきたいことの一つである

自分の子を将来どこで育てれば良いのかを自分の目で見極めたいと思う

 

 

心のミキサー

2019/03/14 木曜日

 

今日は自分の出身高校の前にあるチョコレート専門店に行った

昨日も閉店間際の18時50分くらいに行ったが、チョコレートが売り切れていて買えなかった

しかも店員さんの「あ、お待ちしておりました!」という声と同時に、当時SGH担当の先生と陸上部の副顧問だった先生が後から来店してきたため、慌てて店を出た

おそらく事前に電話か何かで翌日のホワイトデーのお返しでも予約しておいて、延長届けが出ている部員を18時30分までに学校から追い出した後にチョコを受け取りにきた、という感じだろう

 

今日は昨日の反省も踏まえて15時前後に店に入った

15種類くらいのチョコを試食でき、その味でアイスやドリンクも頼める

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自分は20%台の甘めのホワイトチョコが好きだ

これは自分的にはホワイトデーのお返し的な意味合いも込めていたが、結局ほとんど自分が食べてしまった

 

席について5分後くらいに同世代の女2人組が店に入って来た

それは自分の高校の同期の2人であり、そのうちの1人は彼女と同じ中学校であった

1人はクラスも一緒だったしよく話す、もう1人は3年間で数回しか話した事ない

その子のおかげで4人での会話が生まれたのは不幸中の幸いだったが、自分はずっと黙ってしまった

彼女に対してのアカウントと友人や知人に対するアカウントが違うから、どっちのアカウントで発言すればいいのかわからない、といった感じ

負の感情に囚われている時以外で唯一自分が黙る時のような気がする

心臓のBPMが190になるような気がして、君は気づくのかい?なぜ今笑うんだい?という感じになった

いつまで経ってもこういう局面には慣れない

こういう局面を乗り切れるレベルまで自分の人間力が達していない

彼女は「今日は化粧薄めなのに、」と焦っていた

女の子は外に出るだけで大変みたいだ

 

その後予備校の男友達5人とカラオケに行った

久しぶりに行ったので、肺活量と声量が厳しかった

腹筋が足りてないんだろうな多分

サッカー部出身の子は声量が大きく、やっぱり腹から声を出すという経験が多い子ほどカラオケは有利なんじゃないか、と思った

そもそも自分は女性シンガーの歌をカラオケで歌うタイプだし、野田洋次郎川谷絵音みたいな、どちらかといえば声が細くて高いミュージシャンから音楽が好きになったというのもあるのかもしれない

初めての人とカラオケに行くと、「お、この曲なら俺の方が上手く歌えるぞ」とか「なるほど、この曲は大体ここで音程を外しやすいな」「この曲歌う人ってこの曲も歌うのか」みたいに新しい発見をもたらしてくれるし、自分自身を相対化するきっかけにもなる

これはカラオケだけに限らず、人間はできるだけ多くの選択肢に触れ、その共通と差異に鋭い観察眼を向けることで自分の中の正解を見つけ出せるのだと思う

こうした積み重ねが人間力を向上させてくれるのだと思う

世界は混ぜてしまった方がいい

 

 

 

 

アオハル

2019/03/11 月曜日

 

朝起きたら夢から覚めるんじゃないかと思って心配するくらいに、昨日は夢見心地だった

今日はまず膨大な量の教材を置いている予備校に顔を出した

事務室に入るやいなや、おめでとうと言われてアンケートを書かされた

まぁ2年も世話になったわけだから、これくらいのお返しをするのは当然だと思ったが、このアンケートは一体なんの役に立つのだろうか、と思った

今の彼女と出会ったのもこの予備校だったし、合格と不合格という両極端の体験をしたのもこの予備校に通っている時だった

喜怒哀楽の全方位にベクトルが拡大するような経験をした

その予備校を出ると彼女の車でスタバのドライブスルーに行った

自分が冬に予備校まで自転車で行くのを不憫に思い、送り迎えをしてあげたいと思って免許を取ってくれたらしい

本当によくできた彼女だと思う

別に自分が育てたわけではないが

 

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いつものダークモカフラペチーノを車の上に置いて写真を撮るのが、一つの憧れだった

助手席でフラペチーノを飲むのがオシャレだと思っている自分は女々しいのかもしれない

そして彼女が合格祝賀会をしてくれた

完全個室の3時間コース

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肉ケーキらしい

これは多分全部牛タンだったと思う

これが全て牛の舌だと考えたらゾッとする

この店の裏に、舌を抜かれた牛の死体が山積みになっていたらどうしよう

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そして10品近くの寿司や焼き鳥やビーフシチューを食べた後は、原宿りんごが出てきた

肉と野菜の分業体制なので、必然的におびただしい量の牛タンを食べ終わった自分はもうすでに顎関節症になりかけていたが、普通にこの原宿は美味しかった

 

ご飯を食べ終わるとプリクラを撮りにいった

自分はプリクラを撮るのがあまり好きじゃなくて、いつも彼女の誘いを断り続けていたのだが、今日は感謝とお礼の意味も込めてプリクラを撮ろうと思った

聞くところによると、新しいプリ機が女子高生に人気らしい

それはFuRyuのアオハルという機種で、カメラを自分で自由自在に操れるものだと聞いた

実際に行ってみると、広々とした空間でカメラの高さや角度を自分で調節でき、壁のボタンで撮影できるという斬新なシステムだった

なんか、エヴァンゲリオンを操縦しているみたいで楽しかった

これは、プリクラ撮影風景を動画に収めて、それを4倍速くらいでインスタに投稿する女子高生にウケるだろうなと思った

正直これならまた撮りたいと思った

多分近い将来、また撮ると思う

 

 

 

 

自分のいちばん長い日

2019/03/10 日曜日

 

今日は運命の日

前期試験の合格発表だけでなく、R-1の決勝と3年A組の最終回もある

まず今日は緊張で寝られなかった

8時30分ごろから断続的に睡魔が断末魔の予言みたいに襲ってきて、11時から布団を被ってさんまの駐在さんの残りを見たが、CMが入るたびに時計を見て、掲示板やTwitterを見て、合格発表がまだであることを確かめて、を繰り返していた

というのも去年は11時40分くらいに起きて、自分の部屋でなんとなく東大のホームページにアクセスしたら自分の番号がないことがすぐにわかってしまった

しかも、その後に両親がいる部屋で、初めて合否を知ったというような芝居まで打ってしまった

そんな苦い思い出がフラッシュバックしたから、正直受かっているような気もしなかった

ちなみに東京大学の合格発表はネットの合格者一覧のページから自分の番号を探すタイプである

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今年は11時50分ごろに両親に呼ばれて、リビングで自分が見ることになった

12時ごろに簡易版っぽいものが掲示板に貼られていて、それを恐る恐る見たら自分の番号はあった

でも「これマジ?」みたいなレスをしている人もいて、いやここでぬか喜びをするわけにはいかないと思ってホームページの方を見ると、やっぱり番号があった

「あった」と呟くと、「あった!?」と母が聞き返してきて、うんと言うと泣いて喜んでくれた

普段は寡黙な父も「やったー!」と教科書みたいなバンザイを披露し、なんか自分よりも喜んでいる両親を見て不気味なくらい冷静な自分がいた

というか信じられなかった

自分が受けた文科2類の最低点が去年より8点近く上がって文1のボーダーを上回っていたし、個人的に去年のボーダー前後だと思っていたから、本当に信じられなかった

とりあえず後輩と彼女だけに教えておいて、合格通知が来てから報告すべき人々などに伝えようと思った

格通知のレタックスが届くのが15時ごろだと聞いていたので自宅で待機していたが、結局届いたのは17時前で、しかもちょっと雨に濡れていたので、天気と同様に気分は晴れなかった

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とりあえずTwitterInstagramのアカウントを創設して公式に合格を発表した

数人が拡散に協力してくれたのもあって、多くの人の目に触れる形で発表できたと思う

割とこういう時はみんなシンプルにおめでとうと言ってくれる人が多かったし、「やっとか」「突然消えたからどうしてるかなと思ってた」「気になって名前で検索してブログ読んでました」みたいな人も結構いてびっくりした

自分は忘れ去られた存在だと思っていたので、覚えてくれていたことが嬉しかったし、なおかつ自分のことのように嬉しいと喜んでくれた人や祝賀会を催そうとしてくれる人が多くて、少し意外だった

でも自分はまだ実感が湧かなくて、むしろ手続きなどのミスをしないか緊張していた

高校の顧問の先生にLINEをすると、「才能は抜けていたから受かると思っていた」と言ってくれた

自分の才能は自分以外の多くの人を幸せにできるらしい

この上なくありがたきお言葉だった

今日は自分史上最も長い日だったと思う

そしていちばん不思議な日だった

長すぎる受験を通じて自分は自分自身を見つめ直す機会が増えたと思う

これからは受験期の喜怒哀楽を忘れずに、この経験をこれからの受験生や未来の自分自身に還元していきたいと思う

ここを自分の中のバイブルにしたい

 

 

 

童話「町工場の手袋」

2019/01/29 火曜日

 

童話を書いてみました。

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「町工場の手袋」

 

昔、あるところに1つの手袋がありました。

持ち主は町工場でアルバイトをしている少年。

バイトが終わって少年が着替えると、いつも手袋は靴下の天野くんや、インナーのジャックくんからバカにされていました。

 

「きったね〜、またお前汚れてるよ〜ww」

『お前も早く アビリティ を身につけないといつまで経っても汚れたままだぞ、ま、お前みたいなボロ手袋はそっちの方がお似合いだけどなwww』

 

アビリティ__それは自分自身を新品同様に保つ能力のことらしいのです。

以前、手袋が周囲の衣服たちに「どうしてそんなに綺麗なの?」と尋ねた時に教えてもらいました。

少年の衣服の中で手袋だけがその能力を身につけておらず、バイトが終わった後は手袋だけがいつも汚れたままでした。

「しょうがないじゃない!アビリティをまだ身につけていないんだから!」

いつもピカピカしているスニーカーのクリアちゃんが手袋をかばってくれました。

 

《僕はアビリティがないから、こうして毎日バカにされるんだ。 靴下も、インナーも、スニーカーも、帽子のハットリも、ズボンのボトム・スミスも、みんな綺麗なのにどうして僕だけ…》

 

手袋にとっては毎日のバイトが憂鬱でした。

町工場の手作業は手袋をオイルまみれにしました。

バイトが終わって少年が手袋を脱ぎ捨て、「バ終」とツイートする瞬間が、手袋にとっては死刑宣告を待つ囚人のような心地がするものでもありました。

その瞬間に他の衣服たちによる悪口大会が始まるからです。

手袋は涙と少年の汗でいつも湿っていました。

 

 

ある日、ふと、少年が手袋を見て言いました。

「そろそろ洗濯しないとな…」

少年は手袋を洗濯機に投げ込み、スイッチを入れました。

 

《なんなんだ、この今まで味わったことのない動きは……!!心が…洗われる…みるみる綺麗になっていく…これで俺も…》

 

取り出された手袋は新品同様の綺麗さを取り戻していました。

 

《これが…アビリティ…ふははは、やったぞ!これで俺もバカにされずに済む…最高だよアビリティ…!!!》

 

手袋は明日のバイト終わりが楽しみでした。

これでみんなに認めてもらえると思ったからです。

 

次の日の少年の仕事は図引きでした。

設計図を作成するだけなので手袋は汚れません。

《やった、これならバイトが終わるまで新品同様でいられる…》

バイトが終了して少年が「バ終」とツイートすると、手袋はスケートリンクでイナバオワーでもしそうな勢いで喜びました。

「みんな、聞いてくれ!やっとアビリティを身につけたぞ!」

 

 

しかし周りの衣服は新品同様の手袋を見るやいなや、クスクス笑い始めました。

「お前さぁ、アビリティが何か知ってる?w」

天野くんがそう言うと周りのみんなは爆笑しました。

「どうして笑うんだよ!今まで俺だけ汚れていたからバカにしてたんだろ!?」

『洗濯してもらっただけなんだろ?』

アビリティを履き違えてんじゃねぇよ!履き違えるのは靴下だけにしとけ!」

「え、洗濯してもらっただけでアビリティを身につけたとか、普通にダサくない?w」

「ダサすぎちょーウケるww」

「草」

 

いつもは手袋をかばってくれるクリアちゃんやアクアちゃんまでもが手袋を笑いました。

結局、慰めてくれていた人たちもみんな、実は手袋のことをバカにしていたのです。

むしろ、綺麗になったことで以前よりも風当たりが強くなっていました。

『勝手に洗濯とか、もうこれ普通に居場所ないでしょ。漂白罪で死刑だよ。』

「洗濯物は干さないといけないwww」

「干した後は結構叩かれるしね」

 

《どうしてなんだよ…綺麗になればバカにされないと思っていたのに…かえってバカにされるようになったじゃないか…これならいっそ…》

 

気付けば手袋は自分で自分を汚していました。

綺麗になって余計にバカにされるようになった自分を憎む一心で、ひたすら汚していきました。

本当はアビリティなんてものはなくて、ただ単に町工場の作業で1番汚れやすいのが手袋で、周りの衣服たちは日々のストレスを発散するために適当な理由をつけて何かをいじめたいだけだということも知らずに。

 

《これで元通りだ…これならもうバカにされずに済むはずだ…》

 

翌朝、いつも以上に汚れている手袋を見た少年はその手袋をゴミ箱に捨ててしまいました。

 

おわり

 

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